アガリクスという言葉を、新聞や雑誌、ドラッグストアの店頭などで見聞きされた方は多いでしょう。でも「アガリクスって何?」と聞かれたら、植物の名前? それともビタミンやミネラルのような栄養素だったかな?などと、とまどわれる方もいと思います。答えは----------
アガリクスは、学名を「アガリクス・ブラゼイ・ムリル(Agaricus blazei Murrill)」「アガリクス・ブラジリエンシス」、和名を「ヒメマツタケ」または「カワリハラタケ」というハラタケ科のキノコで、見た目はマッシュルームに似ています。
「アガリクス」の原産地は、ブラジル東南部のサンパウロから200kmほど郊外のピエダーデ山地。その山中でしか自生しないため、「幻のキノコ」や「神のキノコ」とも呼ばれていました。その後日本へも移入され、人工栽培が始まり、生食や加工等に利用されるようになったのです。
多数のアミノ酸を始めとした栄養成分が含まれていることから、このキノコを原料としたいわゆる「健康食品」が広く販売されるようになり、それらの商品に「アガリクス」という名称が使われています。細胞試験や動物試験などで抗腫瘍活性が確認され、現在ではヒトにおける臨床試験なども少数ながら行われています。
現在は、環境の変化などにともない、ほとんど自生しておらず、ブラジルでも人工的な栽培によって収穫されています。日本におけるアガリクス・ブラゼイの流通量、研究開発の進捗状況では世界一といわれています。
研究の結果、アガリクス・ブラゼイにはビタミンやミネラル、酵素など実に多くの栄養成分が含まれていることがわかりました。その数、実に80種類以上。
【1960年〜1980年】
アメリカの科学者であるペンシルベニア州立大学のW.Jシンデン博士とランバート研究所のE.Bランバート博士らが率いる研究班が、1960年代初めにブラジル・サンパウロの郊外、ピエダーデ山地で暮す住民たちに成人病が極端に少なく長寿であることに着目し、常食としている「アガリクス」の存在を発見。アメリカに持ち帰り研究を始めました。
そして「アガリクス」には他に類を見ない貴重な成分が多数含まれていることがわかったのです。その後も様々な学者によって研究が進み、食効としての機能性の高さを示す研究成果が次々に発表されて、世界的にも知られるようになりました。
「アガリクス」と日本との関係は、ピエダーデ近辺で農業を営まれていた古本隆寿さんが、1965年に日本へ送付したキノコ菌に由来します。その菌は、ベルギーのハイネマン博士によって学名「アガリクス・ブラゼイ・ムリル」であることが鑑定されました。
そして日本でも人工栽培が始まり、1975年には食用キノコとして市場に登場。乾燥茸を煎じる飲用法が知られるようになりました。
【1980年〜1990年】
日本へ送付された「アガリクス」菌は、1982年に岩出亥之助(いわで いのすけ)農学博士(当時、三重大学農学部教授)により、和名「ヒメマツタケ」と命名され日本菌学会誌に掲載されました。
日本薬理学会(1981年第54回開催、1983年第56回開催、1984年第57回開催)や日本癌学会総会(1985年第44回開催)などで、「アガリクス」の抗腫瘍効果が発表された結果、わが国でも注目を集めるようになり、いわゆる「健康食品」や「健康飲料」などの有用材料としての活用が始まったのです。
【1990年〜現在】
1990年代に入り、原料として安定的に流通するようになったことで、サプリメントなどの「健康食品」用素材として、「アガリクス」市場は拡大していきました。
前述の1社の製品に安全性の問題があったため、市場には「アガリクス」製品全体に対する風評被害が蔓延しました。そこで2006年9月に業界では「アガリクス・ブラゼイ協議会」を設立し、原料と個別製品に安全ガイドラインを制定して、安全性への確認に努めています。