活動施策



アガリクスの栽培 第5回


みなさま、こんにちは!
前回のコラムでやっとアガリクス子実体が顔を出しました。
さて、菌糸の培養や熟成など長い期間をかけてお目見えしたアガリクス子実体ですが、これから収穫までは一時も目が離せません。

アガリクスが発芽した写真14.を再掲載します。


写真14.覆土後20日目の様子
写真14.覆土後20日目の様子

・生育工程
アガリクスの場合、芽出工程と生育工程で環境条件はほとんど同じです。
(温度23℃前後、湿度90〜95%RH、CO2濃度1,500ppm以下)

ひとつ違いを挙げるとすれば『光』です。
キノコは植物と異なり、葉緑体はありません。しかし、生物学・生化学的に光の影響を受けます。
第一に、光に対する屈曲性があります。明るいほうに柄をもたげながら、一方で日傘のように光を遮ろうと傘を広げます。

キノコの生長を観察するのは大変に面白く、上記のとおり光があると日傘のように傘を広げ、湿気が多ければ今度は雨傘のように傘を広げます。呼吸によって二酸化炭素濃度が高まってくれば、少しでも新鮮な空気を吸おうと柄が長く伸びるのです。市販のエノキタケはこの原理を利用し、筒状に紙を巻いて柄を長く伸ばしています。
第二に、光の波長によってはビタミンDの量が増えます。
これはビタミンDの前駆体であるエルゴステロールが光を受けることによって化学構造が変化し、ビタミンDに変換されるためです。
ビタミンDはカルシウムの吸収を高める重要な栄養素として知られています。
しばしば「シイタケを料理に使うときには、日光を当てたほうがよい」と言われますが、それはビタミンDを増やすためです。

もしみなさまが、シイタケを日光に当てられるのでしたら、傘の裏側に光が当たるように向けられると、なおいっそう効果的でしょう。

そのようなわけで、光の利用については日光も含め、各栽培場の条件に合わせてうまく利用されています。

お話しを戻してアガリクスの生長ですが、「雨後の竹の子」のごとく数時間単位でグングン育ちます。写真14.の状態から約1週間で収穫適期を迎えます。目安は傘がまだ開ききらず、ヒダを隠す内皮膜が破れる前です。傘が開いても効用に大きな差はありませんが、胞子を形成するとヒダが黒っぽく変色し、見かけ上の品質にバラツキが出ます。
ですから、アガリクスの生長に合わせてタイミングを逃さず毎日、朝晩、最低二回は収穫に回らなければなりません。

写真13.アガリクスの菌床栽培における『覆土』
写真15.収穫適期を迎えたアガリクス
<アガリクスの話>

・アガリクスの栽培 第1回
・アガリクスの栽培 第2回
・アガリクスの栽培 第3回
・アガリクスの栽培 第4回
・アガリクスの栽培 第5回
・アガリクスの栽培 第6回
・アガリクスの栽培 第7回